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『そう、現れたその女性は口裂け女だったのです。
少年は、あまりの怖さと驚きに飴を落としてしまいました。
そして、口裂け女はニヤリと笑って、言葉を繰り返しました。
「わたし……きれい? ねぇ……わたし……きれい?」
少年は後退りするように、一歩引きました。
怖さのあまり、足が竦んでいて逃げることも難しい状態です。
口裂け女は、ニヤニヤ笑いながら大きな口で繰り返しています。
「ねぇ……わたし……きれい……?」
悲鳴すらも出せない少年。
立っているのもつらくなっていました。
「きれい? きれい?」
ついに少年は、倒れるように座り込んでしまいました。
その時、少年のポケットからはまだ舐めてない飴が落ちました。
少年は「もうどうにでもなれ」という気持ちで、とっさにその飴を口裂け女に投げました。
するとどうでしょう。
口裂け女が飴を凝視して止まっているのです。
少年は唖然としながらも、チャンスとばかりにフラフラとその場から逃げ出しました。
「はぁ……はぁ……」
追ってくる足音はなく、トンネルを抜けました。
ふと振り返り、トンネルの中を覗くと、もうそこには口裂け女の姿はありませんでした。
少年はホッとして、再び倒れ込みました。
体中から嫌な汗が流れ出ていて、しばらくは自力で動くことができなかったそうです……』
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