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~君の弱さなら~ KYOHYA 17
「あたしは、何で生まれてきたのかな」
今にも溢れそうな涙を瞳に溜めて、君は笑う。
『何故そんなこと思うんだい?』
応接室のソファに二人で、並んで、僕は君に問う。
「あたしがいるから、お母さんはお父さんと離れられなかった。」
「あたしがお母さんを選んだから、おばあちゃんはあたしが嫌いなのかもしれない」
「親戚の嘘臭い演技みたいな集まりに、ヘドが出そうで、そんなこと思う自分がヤだ」
ポツリポツリと前を向いて話す君。
涙が溢れそうだ。
いつも強気で笑ってる君が、
こんな表情をするなんて。
「ごめんね、恭弥。こんな弱いあたし、らしくないね」
弱い人間なんて嫌いなのにね、と付け加えながら、ゆっくり僕のほうへ向いた君の左目から一筋の涙。
何故だか、僕の胸が締め付けられた。
無性に、君に触れたくて。
『君は強いよ、姫。自分の弱さを自覚できるんだ。だから僕の前では泣いていいよ。君の弱さなら、僕が全部包んであげる』
抱きしめた腕の中の君に、そう囁いた。
「きょ…恭弥あ……」
とめどなく流れる涙が、僕の学ランに染み込んでいくけど、そんなことは気にならない。
強い君が、僕だけに見せた弱さだから、
僕が包みこんで、君を愛そう。
「ありがとう、恭弥」
『?何が?』
「優しいね」
『優しくはないよ。君だからだね』
「うん」
笑顔も強さも、涙も弱さも、全て僕だけに見せて。
僕の腕で泣き疲れて、眠った君に、そう呟いた。
END
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