悲哀と憎悪のクリスマスイヴ

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迅速に買い物を済ませたオレは帰路についた。 これ以上ここにいたらオレのガラスハートが粉々に砕け散ってしまう。 そんな気がする。 ただただ、住宅街を目指した。 進むにつれ、商店街のクリスマスソングや人の声は小さくなっていった。 少し歩くと、全く聞こえなくなった。 悲しさを消すため歩いてきたが、いざ何も聞こえなくなるとさっきより悲しい。 フクザツ…。 ただでさえ沈んでいたオレの気持ちは、さらに沈んでいった。 オレは俯きながらしばらく歩いた。 家が近づいてくる。 そのときだった。 今まで誰一人ともすれ違わなかった住宅街の帰り道で、人とすれ違った。 普段なら気にならないそんなことを、沈んだオレは何故か気にしてしまった。 オレは振り返った。 しかし、その人はオレに気づくわけがなく、そのまま歩いていた。 その人はオレと同じくらいの女の子のようだった。 チラッと見えた横顔はかなり美人。 何故か大きな旅行鞄を転がしていた。 観光?…っても観るもんないよな。 引っ越しはなさそうだし…家出とか? う~ん…。 そのときのオレに沈んだ気持ちはなかった。 そして家についた。 オレは再び沈んだ気持ちになり、その人のことはすっかり頭を離れてしまった。
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