激-壱-

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姫乃の突拍子な言葉にぎょっと驚く。 『小さい頃とか…局長に会った時とか…』 「ん~~…そう…ですね…」 口に手を当て、考えた。 「…近藤さんと出会ったのは九つの時…。道場に入門する時ですかね。」 『九つの沖田さんってきっと可愛いんですね』 苦笑いする沖田は話しを続けた。 「土方さんと会ったのもその時です。実は私、初めて会った頃、土方さんの事嫌いだったんですよ。口も聞きたくなかったですもん」 『え?!そうなんですか?!』 「近藤さんに懐いてた私は、いつも二人一緒に行動する土方さんがなんだか嫌だったんです」 姫乃はクスクス笑い、沖田は顔を赤くした。 『沖田さん、局長取られたみたいに感じたんですね』 「そりゃ!…妬いてましたよ…」 投げやりに後ろ頭をかきながら言った。 「でも…ある日突然、ボロボロの恰好で道場に来たんです。流石にどうしたのか聞いたんですが、なんでもねぇって言われちゃって…」 すると思い出すように嬉しそうに笑った。 「後になって聞いたのが、私の悪口を言っていた自分よりも大人の人達を懲らしめた…って。近藤さんも後から懲らしめに行ってくれたんです。土方さんと私の為に…」 『……』 姫乃は微笑んで沖田を見つめた。 「…それから……あれ…」 姫乃に視線を向けると、規則正しい寝息を立てていた。ふっと笑みを零すと握った手を離し、頬に触れる。 「……それから新撰組を結成し、貴女に出会った…。貴女が傍で笑ってくれました…」 零した笑みは切ない笑みに変わる。 沖田は立ち上がると部屋を出た。 「うわ~…冷えますねぇ…土方さん」 月明かりに照らされながら、ニッコリと笑みを向けた。 「…んな薄着でいるからだろ…」 その先では自分が着ていた上着を脱いでいく土方の姿があった。 ずっと待っていたのだろうか…と沖田は思った。が、そんな考えは土方が荒々しく自分の着ていた上着を頭から被されたので、すぐに消えた。 「…土方さんが風邪引いちゃいますよ」 「あのな、俺は生まれてこの方風邪なんて引いたこたぁねぇよ」 土方の子供のようにムキになる言い方にクスクスと笑った。そして、頭から被っていた上着を肩にかけ直すとちらりと土方を見た。 「……なんだ…」 「山崎さんに頼んで薬を調合させましたね??姫乃さんが早く寝るよう…」
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