激-壱-

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「お前は姫乃を贔屓にし過ぎてる」 「かも…しれませんね…」 土方の言葉に小さく同意を見せた沖田は目を閉じふっと笑った。 「でも姫乃さんに対してそこまで思えるのは、ここの隊士達が姫乃さんの言動で多くを学んだと思うからなんです」 「…一番近くにいた自分が一番学んだ……か??」 コクリと頷く。土方も近藤も笑う沖田の表情に驚きながらも、彼の話しをしっかり聞いた。 「土方さんも同じじゃないんですか??」 沖田の言葉にぐっと黙る。少し顔を赤くしながらも、目線を落とした。 「…姫乃さんには生きて、もっと沢山の人達に出会ってほしい…私達が感じた事を姫乃さんに感じてほしいんです」 「…総司…」 少年のような笑顔で見つめる彼に近藤は応えるように笑った。 「ありがとうございます!近藤さん!」 「………総司っ」 立ち上がり部屋を出ようとした沖田に土方が呼び止めた。 「……なんでもない。行け…」 「…私は新撰組の為に姫乃さんをとっただけですよ」 眩しいくらいの笑みを二人に向けると、出ていった。 …- そんな沖田の思いに少しでも姫乃に気付いて欲しい…それが土方の願いでもあるのだろうか…。 一息つくと、静かに廊下を歩いていった。 一方、部屋に残された姫乃は土方の言葉を頭の中で響かせていた。すると、じんわりと涙が込み上げると、それを懸命に擦るように拭い取った。 『…沖田さん……』 小さく呟くも部屋の隙間風の音で掻き消された。 その晩は、それぞれの胸に思いを秘め床につくがしばらくは眠れぬ夜を過ごした。 …- 翌朝、静けさが広がる頓所かと思いきや、カンカンカンカン…と鍋の蓋を叩く音が響いた。 『もう、朝ですよ!戦場でいつまでも寝て…敵さんは待ってはくれませんよ!』 「ん~…もう少し………え!?」 広間で雑魚寝する隊士達は目を擦るのを止め、跳び起きた。 「…ひ…姫乃…ちゃん…?!」 『おはようございます。顔を洗ってから朝餉を取って下さいね』 ニコッと笑って朝の挨拶をするが、驚きが隠せず口はあんぐりと開きっぱなしだった。 そんな時、広間に足を運ぶ者達が…。 「おい、お前ら!さっさと起きて朝飯…を………」 「新八、何固まっ…て………」 「組長達、何驚いてるん…で………」
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