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上から永倉、原田、日比谷が入口で止まり、そして後ろから鉄之助と山崎が不思議そうな顔で来た。
『おはようございます』
「………姫乃ちゃん!!?」
「何してる。さっさと隊務の用意をしろ」
更にその後ろからドスドスと不機嫌な足音が響いた。
『あ、副長。おはようございます』
「…………姫乃…か……??」
笑いながらひょっこりと原田達の間から顔を出す。土方も固まった。
皆が固まる理由…それは姫乃が笑っているのもそうだが、何より姫乃のかっこうに驚いたからでもある。袴を履き、沖田のように髪を全てまとめ頭の高い位置で結び上げていて、まるで男そのもののようだったからだ。
『はい。もう朝食の準備は整ってますので、すぐに食べれますよ』
「…姫」
「よっしゃぁあ!姫乃ちゃん復活を称して朝から食うぞぉお!さっさと起きろ!」
「左之は変わりなくいつも食うだろが…」
原田の言葉に永倉はため息をつくが、どこか嬉しそうに感じた。そして起きてくる隊士と山崎、鉄之助と共に広間へ向かった。
残った土方と姫乃はしばらくその場から動かず、黙っていた。
しかし、眉を寄せていた土方が口を開いた。
「…なんでそんな恰好してる」
『…一晩ですけど…本当に短い時間なんですけど、私なりにいろいろ考えたんです。沖田さんが私を残した理由と副長の言葉を…』
目を閉じて、あの時刻み込んだ沖田の背中を思い出す。
『…でも一晩考えただけじゃ、わかりませんでした…そのかわりに私にできる事が二つ、わかりました』
「……?」
『泣かない事と皆さんの足手まといにならないようにする事です。だから、動きやすい恰好をしてないと。と思いまして…』
笑顔で土方に決意を告げている途中、原田が広間から大声で呼ぶ声がした。姫乃は土方に一礼すると踵を返し歩きだそうとした。
「姫乃」
『はい』
「…泣いてもいいから…笑ってろ…いいな」
振り返ると照れたように姫乃の言葉を訂正する土方の姿があった。
『…はい!』
そんな土方に嬉しそうに答えた姫乃は、明るい朝日が差す中 また沖田に会えると信じて歩き出した。
あの時の背中を見る事が、最後だったと知らずに…。
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