激-弐-

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顔が真っ赤になっていた。 土方は呆れたように腕を組み言った。 「一応、お前は山崎君の助手になってんだ。少しはじっとして山崎君の後ろに」 『悪戯しようとする原田さん達を懲らしめるのも助手の仕事です』 「…ったく…総司みたいな事言ってんじゃ………」 まずい、と思った。つい口走った名前に姫乃は一瞬、寂しげな表情を見せるがすぐにニコニコ笑う。 土方は流すかのように咳払いをした。 「とにかく、もう会津の連中が別院に入ってる。あまり五月蝿くするな」 『はい…』 少ししょんぼりしながらも反省し、苦笑いした。 明治元年一月二日、 この日は会津の先遣隊約三百人が大阪からやってきたのだ。その使いの者の挨拶がわりの報告もあった。 「主力は三日あたりに到着」 土方は戦は明日、行われると踏み戦力の確認のため本願寺内を出歩いていたのだ。 さらに、使いの話しでは鳥羽街道、竹田街道、伏見街道の三道を押しに押して京都に入るため、伏見から鳥羽にかけて布陣している京方の薩長土の諸隊と衝突するらしい。 じっとしていられない土方は、昼間から部屋に戻ると地図を広げ考えた。 「……面白い…」 ニッと笑った土方は顔を上げた。 すると、お茶が載ったお盆を持った姫乃が見てはならないものを見てしまったような顔をして立っていた。 『…し…失礼しました!!』 ガシッ!! 「………誰にも言うな……」 『はぃい!!』 …- 『はぁ…確認…ですか…』 「なんだ、その気の抜けたような返答は…」 土方は地図が見やすいよう姫乃の側に向け、説明し始める。 指で道をなぞったり、手振り身振りで説明する土方の話しを始めはしっかりと聞いていたが、次第に夢中で話す土方の顔に魅入っていた。 「…市街戦は新撰……なんだ??」 『へ?!いえ…副長って、ホントに喧嘩がお好きなんだなぁと思って…』 姫乃の言葉に一瞬、動きが止まり、はっと気がつくと腕を組みいつもの「土方」に戻した。 どことなく恥ずかしかったのか頬を少し赤くしていた。 「…悪かったな…ガキの頃は喧嘩しかした事ねぇんだよ…」 『原田さん達が言ってました。副長は日本一の喧嘩師だって。続けて下さい』 クスクスと笑って土方を誉める。 そんな土方は後ろ頭をかいて説明の続きをした。 「…市街戦は新撰組の得意分野だ。何故だかわかるか??」
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