激-弐-

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『常に闘うところが市街だったから…ですか??』 「あぁ。刀を振るう距離感覚を覚えているからな…が…」 物足りないような語尾に、再び腕を組む。 『が…??』 「…人数が足りん。」 腕を曲げ顎を支えるように考えた。ふと、姫乃へと視線を移す。 真剣な眼差しで地図を見つめ考える姿を土方はある人と重ねていた。薄れゆく記憶の人物に…。 「…姫乃。」 『はい!』 すぐに顔を上げてニッコリ笑う。 土方は姫乃が煎れてくれたお茶をとり一口、口に含む。 「なんでもない…」 『??…はぁ…』 姫乃から目を反らす土方。少し気まずい中、日比谷と鉄之助がひょっこりと顔を出した。 「副長ー!お茶煎れ…て……また姫乃さんですかぁあ!」 「姫乃ちゃんここにいたんだ」 入って来た瞬間に鉄之助の絶望に近い叫びと暢気に話す日比谷を見て、土方はげんなりと姫乃は明るくなった。 「…お前の茶ぁは薄い…。」 『副長ってばそういうから鉄之助君が泣いちゃうんですよ』 「泣いてないですよ!」 クスクスと笑う姫乃の言葉に赤くなる鉄之助。日比谷は笑う姫乃の顔を心配そうに見つめていた。 「…日比谷。ちょっと来い…」 「……えぇ!?あ、はい!!」 「良太郎さん何したんだよ」 アハハと鉄之助が指をさして笑うのを余所に、土方は立ち上がり日比谷を連れ部屋を出た。 「…姫乃は…何かあったのか…」 「…その……」 「なんだ」 焦らすように日比谷は俯くので、土方は尚更心配になった。 「……なんにもないんですが…」 「…………」 恐る恐る土方に告げ、怒鳴られると思いきつく目を閉じていた。が、小さな息を吐く音がした。 「…ったく…お前が深刻そうに姫乃を見てるからてっきりなにかあったのかと…」 「す、すみません!」 「……何にもないんだな??姫乃もお前も」 日比谷は土方の言葉に目を丸くした。初めて鬼の副長の優しさの部分に触れたからなのだろうか…。 「じ、自分は年がら年中健康です!」 「…姫乃も同じ事言うからなぁ…しっかり励めよ…」 ふっと笑い、背を向けると歩きだした。そんな時に日比谷は、はっと気付いた。 「副長!」 顔だけ少し振り向く。日比谷は少し申し訳なさそうに伝えた。 「沖田さんが…沖田さんが「すみません」と言ってました」 「………あぁ…」
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