激-弐-

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そして再び歩きだし、戦闘の準備で慌ただしい廊下を通って行った。 一月三日。 土方は門前で腕を組み、大阪城から来る会津藩兵を待っていた。左右には姫乃と日比谷がいる。 『副長が自らお出迎えなんて珍しいですね』 「明日は雨ですかね」 「……来た………」 日比谷の発言にイラッとくるも大勢の足音に反応した。二人はキョトンとしながら土方が見る方角を見た。 兵士が列になって向かってくる。すると、先頭の男が笑顔で手を振ってきた。 「これはこれは…土方さんじゃあないですか」 「お待ちしてました。…大砲の方は」 「ハッハッハッ。相変わらず、せっかちな方だ…三門…といったところですな」 会うなり握手をしてきた老人があの土方とにこやかに話す。 姫乃はコソッと土方に尋ねた。 『…あの…副長…この人は…』 「ん??あぁ…ここの隊長で“大砲奉行”だ」 後ろにいた姫乃に気付き目を伏せて楽しそうにふっと笑った。 「ハッハッハッ!土方さんこんな可愛いお嬢さんにそれはないでしょう。この度、会津藩の隊長を務めさせていただいております、林権助でございます。お初にお目にかかります…佐倉姫乃さん」 『…え…』 土方、日比谷、姫乃は驚いた目でこの林という老人を見た。 「大阪城におられる近藤局長と沖田さんにお会いしてから、こちらに来ました。会った際に貴女によろしくとの事で」 『……あ』 「立ち話もなんですので…中へ…姫乃、日比谷、案内してやってくれ。権助さんは…望楼へお伴していただいても…??」 切れ長の目が鋭く光り林の目を見た。林は気付くとニッコリ笑って了承した。 何かを言おうとした姫乃は土方に遮られたため、諦め日比谷と共に兵士を案内するため中へ入って行った。 …- 「…形勢はいかがです」 望楼についた二人。林は真っ先に薩長の陣地の配置を聞いてきた。土方はお手製の地図を広げ林に見せる。 「ほう…これはこれは…。誰が作ったのです」 「私です。ガキの頃から自然と地形を覚える癖があったので…」 そんな事はない…。多摩川べりで喧嘩をしていたころは、初めに地形偵察をし、地図を作ってから攻め入っていたのだ。 言わば、喧嘩をかさねていくうちに独自に得たのである。 それを知らない林は関心したようにその精密な地図に見入った。 「土方流の軍策ですな」 「恐れ入ります」
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