激-弐-

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部屋を開けるなりすぐに姫乃を連れ出そうとした。姫乃は戸惑いながらも後からついていく事に。 「…いいか、今からお前は俺がよしと言うまで何も喋るな」 『え…?!どうし』 「それから俺と市村、日比谷から絶対に離れるな。常に間にいろ」 多少小走りで土方についていく姫乃は突然すぎる事に開いた口が塞がらなかった。 話しかけようとしたが、陣地に入った。中では会津部隊、新撰組は隊ごとに列になり乱れはなかった。土方が入った瞬間に原田や永倉らが笑って迎えた。 「やぁっと来たっすね!先に一人で行ったのかと」 「さっさと暴れてやろうぜ土方さん!!」 「まぁ、待て原田。先に隊士全員に酒を巡してやってくれ」 冷静に話す中、周りは大砲の音や小銃の音が増えていく。隊士達は今にでも参戦したいかのようにうずうずしていた。 そこに老人、林が楽しそうにやってきた。 「土方さん…私も一杯いただいても」 「…どうぞ。姫乃、杯を持っていってやってくれ」 姫乃が動こうとした瞬間に林の驚いた声で動きが止まった。 「何を考えてるんです、土方さん!女の子をこんな戦場に連れて来るとは…!!」 「姫乃…酌…。全員、酒は巡ったな」 姫乃から酒を注いでもらい、林の言葉を無視して背を向けると隊士達に向かって、轟音に負けぬ…大きな声で言った。 「局長がいない今、新撰組の名を守れるのは俺達だけだ!…だが…名を守る為に闘うな!己の誠を守る為に闘え!!そして死ぬな!!!…新撰組は“誠”の意思の元に集った、勇敢な獅子達の集まりだ。お前らがいなけりゃ、新撰組…“誠”は消えちまう。俺はお前らを信じてる。…新撰組の意地を見せつけ、暴れてやれ!!」 土方の言葉に不安は一気に消し飛ばされ、血気盛んに皆叫んだ。そして酒を飲み干すと刀を抜き、準備万端と言うように笑っていた。 「…権助さん。俺は…こいつらを何よりも信じてます。それに姫乃が新撰組の一員じゃないなんて思った事はない。こいつの一緒に闘い守る…仲間に対する“誠”を無下になんてできねぇんだ…」 涙が出そうになる姫乃の頭を土方は優しく撫でる。その様子に林は何も言えなくなった。 「…さぁ…始めましょうか」 「市村!お前は俺の援護だ!日比谷!!死んでも姫乃は守れ!!」 土方が刀を振り上げた瞬間に隊士達は飛び出して行った。
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