激-弐-

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「近藤さん」 肩に羽織りを引っかけ、何やら茶色の包みを持って部屋に入ってくる沖田。 少しやつれたのか顔や手足が細くなっていた。それをごまかすようにいつも結っている髪を解いている。 「どうした総司」 入ってくる沖田にニコニコと笑顔を向ける近藤。 大分、治ってきたらしく刀を持っていた。そんな近藤の側に座ると持っていた包みを見せた。 「松本先生が買ってきて下さった大阪名物のお菓子です」 「おぉ…いただくのは後にしよう…すまんな…」 「…始まってる頃ですかね…あちらは……」 少し視線を落として包みを置く。近藤も刀をしまうと枕元に置いた。 「……大丈夫だろうか……」 「大丈夫ですよ。…我ら新撰組には日本一の喧嘩師がいるんですから」 暗い顔をする近藤に得意げにニコニコ笑って安心させようとする沖田。だが、本人も心配なのか手が震えていた…。 パンッ…パァン!ドカッ、キィイン!! 爆煙と土煙とともに響く銃声や大砲の音に威圧をかけあう、威勢の声。 土方はそんな物にも構わず屋根瓦の上に乗り、少し屈んだ。 「副長!?薩長の標的になります!降りて下さい!」 「…なら、あいつらのが危険だ…」 後ろに控えた市村鉄之助の言葉を無視して、見下ろす戦場を顎で指す。しかし、心配しながらも市村は渋々と見下ろした。 そこには永倉を先導にして弾が飛び交う中、駆け出していく二番隊の姿があった。 「…奴ら…森の中で銃を構える寸法か…。敵ながらうまい作戦だ…」 不敵に笑いながら懐から紙と筆を出し何か書き出した。 こうなったら梃子でも動かないと思った市村は、肩を落とし周りを見張った。 「死角がないとなると…っと…」 「副長!!」 土方のすぐ横の瓦が割れた。弾が飛んできたのだ。依然お構いなしの土方は立ち上がり屋根を降りた。そしてふっと笑いながら言う。 「市村…俺に弾は当たらねぇよ」 『あんなところにいたら当たります!』 降りたそばから姫乃が腰に手を当て、土方を叱った。 一瞬怯んだもののすぐに姫乃の横を通り過ぎる。 『あまり挑発するような事はしちゃダメですよ!後からしっぺ返しくらいますよ?』 「……なんで山崎君のところにいない…」 姫乃には敵わないのか、反らすように話題を変えた。 『「副長がこれから出るから励ましてやりぃ。そしたら、副長もやる気でるさかい」…って言われて来ました』
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