激-弐-

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しかし、かなりの銃弾が飛び交い誰一人身動きがとれなかった。しかし、永倉は打開しようと動きだそうとした。 「待て永倉!」 塀の上から土方が怒鳴る。同時に弾が飛んできて塀の上にしゃがんだ。 永倉は一息つくようにその場を動かなかった。 「いいか、何があっても振り返るな。永倉達の所まで駆けろ…行け!!」 すぐに原田が飛び出す。 ドーン!!ドーン!! 大砲の音と一緒に土方、市村…と次々に続いた。 「走れ!!!走りつ…」 「副長!!」 キィイイン!! 指示を出していた土方は右から飛んできた弾に気付かなかった。が、市村の抜いた刀にて助けられた。少し驚きながら市村の顔を見る。真剣な眼差しでコクリと頷き、土方も返した。 雨のように来る弾と砲弾。その中から血煙が立つ。 土方達はやっとの思いで永倉達のいる松林に飛び込み合流した。 「夜が来るのを待とう。奴らも視界が暗い中、むやみに撃てやしない」 土方は夜戦を覚悟した。 しかし、勝つ自信がどこかにあったのだ。 皆、息が荒いが敵の様子を伺いながらも休息をとった。 「……市村…さっきは助かった…」 「いえ…体が勝手に動いて…まだ手が震えてます…」 「それでいい…。怖いのが当たり前だ」 優しく微笑み頭を撫でてやった。 奉行所では山崎と姫乃がバタバタしていた。負傷した隊士の治療などで走り回っていたのだ。 「佐倉!包帯が足りん!!」 『はい!』 「日比谷!!次の包帯洗ってこい!!」 「はい!!」 治療しても次から次へとやってくる負傷者達。応急処置程度なら姫乃もできたが、弾が入ったまま運ばれてくる者には手が出せなかった。 汗を拭く度に血の臭いが鼻につく。姫乃は眉を寄せ泣きそうになった。 「山崎さん!」 一人の隊士が山崎を呼ぶ。舌打ちをしながらも隊士の側に行くと何やら話しをしていた。 「佐倉」 そしてすぐに戻ってくると姫乃を呼び、着替えながら治療箱の一番下から分厚い冊子を取り出し姫乃に渡した。 『これ……』 「人手不足でオレが出らなあかんくなった。お前はここで怪我人を見てやってくれ」 装備を整えながら話しを進めていく。そんな一方的な進め方に姫乃は不安になった。 『ま、待って下さい!私みたいな素人が』 「戦場でそんな事通じん。それやったら市村はどうなる…初陣が鉄砲だらけや」 『…っでも……』 バンッ!!
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