激-弐-

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山崎は姫乃が持っていた冊子を荒っぽく取り上げ台に叩きつけた。そして、声を張り上げる。 「お前がぐずぐず吐かしてる間にも隊士は死んでく!!お前はなんでここに残ったんや!!」 『それは…沖田さんが』 「沖田さんは関係ないやろ!辞めよう思おうたらいつでも辞めれたはずや!お前は、お前の意思でここまでついてきたんちゃうんか!!……せやないと、なんの為に沖田さんと離れて泣くの堪えながら血みどろになる隊士見てんねん…」 姫乃は下唇を噛み締めて俯き小さく頷いた。そんな姫乃の頭を山崎は優しく撫で冊子を差し出した。 「ここにほとんどの処方が書いてある。…やれるな」 『やります』 冊子を受け取り、しっかりした目を山崎に向ける。山崎は安心すると部屋を出ていった。立ち代わりで日比谷が入ってきた。 「姫乃ちゃん…」 『…良太郎さん…。私、沖田さんにだけじゃない、たくさんの人に甘えすぎてました。恩返し…しないといけませんよね』 立ち上がり、すぐに部屋を出て負傷者でいっぱいの部屋に日比谷と向かった。 あまりの負傷者の多さに部屋はすぐにいっぱいになった。 部屋の広さにも限界があるため姫乃達は裏口に近く井戸がある、奥の部屋へ移すよう指示した。 冊子を見ながらも懸命に治療を施していく姫乃。 「…ケホッ…姫乃ちゃ…っ…助けて…」 『大丈夫です…!絶対に助けます!頑張って下さい…!!』 だが、所詮は素人。思うようにできず時間が掛かってしまっていたが、なんとか寸前で助けていた。 「姫乃ちゃん来てくれ!!」 一息付く間もなく、呼ばれ走って向かった。 『……っ!!』 「…ゴボッ…ヒュー…ヒュー…」 威勢よく飛びだして行った隊士の無惨になって帰ってきた姿に思わず口元を手で覆ってしまう。微かに息をしていた。姫乃は駆け寄ると血まみれの手を優しく握った。 『お帰りなさい…。今日の晩御飯…は…っ、魚の煮付け…っです…よ……』 「ヒュー…ぁ……うぁ…」 泣きそうになるのをぐっと堪え震える声で、笑顔を作る。姫乃の優しい笑顔と手に隊士はコクリと頷くと息を引き取った。 『…っ…良太郎さん、体を拭いてあげて下さい…。拭いたら隊服を着せてあげて下さい…』 「……わかった…」 静かに指示を出すと次の負傷者の元へ向かった。 この時、日比谷は沖田の言っていた 「戦場が人を強くする」 その言葉を思い出していた。
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