激-弐-

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林はしばらく立たなかった。 「隊長!!」 「…触るな」 危ないと手を貸そうとした隊士を払いのけ、座ったまま指揮をとり続けた。 林は立たなかったのではなく、弾が当たり立てなかったのだ。 …- 辺りは夜になり、松林に隠れていた土方は新撰組全員を集め、一本の松明に火を点けた。 「この火に続け。火の進む方角について来い。いいな…俺を信じろ」 隊士達は頷いた。 すると、土方はいきなり大きな声を張り上げた。 「聴け!!今から新撰組約千人、斬り込みをかけるぞ!!」 「千人もいな…もが!!?」 原田は何を言い出すのかと、土方に怒鳴ろうとしたが永倉によって止められた。 それと同時に一気に乱射が始まった。 「…位置を確認したら後ろに回れ」 言い残すや否やすぐに土方は斬った。それに続き隊士は血気盛んに飛び出して行く。 「うぉらぁああ!!新撰組をなめるなよ!!!」 土方は一気に三、四人。永倉も三、四人。原田は得意の槍が折れて使い物にならないほど、敵を倒した。 敵は逃げ出した。土方達の奇襲に恐れをなして北へと逃げる。土方はこの時を待っていた。北こそ、新撰組が襲うべき敵の本陣であったからだ。 「俺に続け」 松明と刀を手に路上を走りだした。 『…だいぶ落ち着きましたね…』 「うん…。でもまだこれからだろうね」 怪我人が来ない今、姫乃と日比谷は包帯や使った器具を洗っていた。姫乃は先程の事を気にしていないのか、忘れてしまったのか…普通に笑って心配している日比谷に接していた。 ふと、あることを姫乃は思いついた。 『…良太郎さん。しばらくここ、頼んでいいですか??』 「いいけど…どうかした??」 『少し…用事で……』 未だ、腫れた目で微笑む。日比谷は頷くと「気をつけて」と言葉を残した。姫乃はすぐに会釈をすると洗っていた器具を置き、奥の部屋へ駆けた。 襖を開け、自分の荷物から布を出す。それを大事そうに畳み持つと、またすぐに外へ向かった。裏口を開け鍵も掛けずに閉めると警戒しながら早足で林の中へと消えた。 そんな姫乃の行動を見ていたのか、黒い影が裏口の戸に手が伸びた。 一方、土方らは奉行所東端まで来て会津の主力に気付いた。 「ここまで、来たのか…林さんは」 「あちらに」
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