激-弐-

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走ってぶつかった者が敵ならば斬り伏せる。そのような混戦であった。 「止まるな新撰組!!進め!!進めぇ!!!」 土方は怒号を出しながら敵らしき人影を見ては薙ぎ払い、さらに進み敵の中心部へ塀を乗り越えた。 薩軍の砲兵らは、戦況の変わりように驚きいそいで砲座を移動しだした。銃隊も集中しはじめる。 土方の周りは死傷者が続出した。会津兵は動揺せず、屍を乗り越え新撰組と共に斬り込む。 しかし、幕軍の最大の不幸が勃発した。 ドーン!! 土方は大きな音に振り返り、我が目を疑った。 なんと、後方の新撰組本陣、奉行所の建物が火の粉を噴き上げ燃え始めた。辺りは真昼のような明るさになり、新撰組は一気に窮地に立たされた。狭い路上に密集していて、恰好の的とはこの事だ。原田と永倉が誘導していく中、土方は血相を変えて来た道を引き返し始めた。 「どこに行くんです!副長!!」 誰が言ったかも気にかけず、土方は奉行所に向かってかけた。 「…小物か…。…壬生浪の女が…っ。言うじゃねぇか……」 松明を放り投げ颯爽と裏口から消えていった。 入れ違いのようにすぐに土方は奉行所の門に来た。ひどく息を荒げ、汗をかいていた。中に入り近くにあった井戸の桶の水を頭から被ると中に入って行った。 「姫乃!!返事をしろ姫乃!!!」 焦る土方はどんどん奥の部屋へ走って行く。火も土方を追いかけた。 「姫乃!!!……っ!」 まだ火が回っていない最後の奥の部屋を開け、土方は口元を手で覆った。真っ赤な部屋は鉄臭い。台には助けを求めたように伸びた手がだらりと下がっていた。 『……副長……』 「姫乃!!何してる早く…っ…!!」 俯せの姫乃の姿、すぐ近くにある日比谷の倒れた姿に土方は言葉が詰まったが、すぐに駆け寄り自分の膝を支えに姫乃の体を起こした。大量の血が辺りに溜まっている。 『…すみま…せんっ…私のせいで…皆さ…んが…』 「喋るな…!!何があってもお前だけは助ける…!総司との約束だ!!」 虚ろな目で止血をしようとする土方を見上げる姫乃はゆっくりと首を横に振った。 『…私は…もう…。』 次第に姫乃の目から涙が流れる。 「…っ…頼むから…死ぬな…!!お前は新撰組の…俺達のたった一つの“華”だ…!その華が消えたら…俺達は……!!」image=254213423.jpg
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