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苦笑いして流れる涙を止めようとする姫乃の手を土方は握った。
『華は…いつか枯れ…て…しまい…ます…』
「お前は枯れない!!俺達や総司が枯らすものか!!」
土方は涙を堪えるが、ポタポタと姫乃の頬に落とす。しだいに部屋に火が回り始める。姫乃は視力が無くなったのか遠くを見るように土方を見た。
『伝えたい…事…伝えないと…いけない…事が…いっぱいある…のに…っ…出て来る…のは…沖田さんの…笑顔ばっかり……』
「…姫乃……!!!」
『……生き…て………』
建物は崩れ、業火と共に
一輪の華が散った。
しばらくして服などを焦がした土方が戻ってきた。原田と永倉、新撰組隊士は急いで近寄った。
「土方さん…!!姫乃ちゃんは…」
「……間に合わなかった…」
「そんな……!!」
どさっと土方は座ると永倉と原田は放心状態になった。隊士は燃える奉行所を涙を流しながら見つめた。中には泣き崩れる者もいた。
「…皆…いるのか…」
伏見奉行所の火炎に照らされる顔の群れを見る。六十数名が立っていた。
「……山崎君は…」
「負傷して護送されました」
頷くと、大声で泣く隊士の肩に手を置き決意したように奉行所を見上げる。
「…この人数でもう一度…奴らを叩くぞ…」
泣く暇さえ与えてくれない戦場で土方は隊をまとめると、火の照明から退避した。
走り続け一先ず安全地帯に来ると耳を澄ませて方角を確認した。
「…土方さん…とりあえず、ここで休もうぜ??…こんな状態じゃあ…動けねぇよ…」
原田が話しかけ未だ涙ぐむ隊士を指さした。すると土方はその隊士に近寄り胸ぐらを掴むと無理矢理立たせた。
「…立て。立って戦うぞ!!お前らがメソメソ泣いてやられりゃ、姫乃に会わす顔がないんじゃないのか!!?」
怒鳴りながら辺りにいる泣く隊士を見渡した。そして胸ぐらを離し舌打ちをする。
「土方さん!」
するとそこに、伝令役の平隊士が駆け付けた。
「…御味方…退きつつあります…」
「なんだと!?」
「俺が行きますよ」
土方の怒鳴りに永倉がいち早く前に出て、確認の役になった。
永倉は西へかけた。
しばらくして永倉はやっと頓集地点に走って戻ってきた。
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