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雨が滴るある日の夕刻僕は公園にいた。
誰もいない雨の日の公園は何処の場所よりも気分を淋しくさせた。
そんな公園の片隅にはダンボールが置いてあり、その中には小さな子犬が入っていた。
その子犬は僕が近づくと尻尾を左右へふり身を乗り出してくる。しかし一見元気そうに見えるが体は痩せ細っており、雨に濡れて寒いのか小刻みに震えていた。
「ごめんな。うちじゃ換えない。」
僕は傘を置いてその場を離れた。離れる瞬間その子犬は「わんっ」と小さな一回哭いた。
僕は一瞬立ち止まったが、連れて帰る事も出来ないので足早にその場を離れた。
家に着くと、雨はいっそう強くなり風も出てきた。窓がガタガタと揺れその風の強さを感じさせる。
僕はココアを作り冷えた体を温めた。
「あの犬大丈夫かな。」
やはりあの子犬が気掛かりだった。こんな雨の中生きていけるのだろうか。ただでさえ衰えていたのに。
僕は公園へ行く事にした。タオルを数枚持ち家をでる。
―――‐…‥
公園へ着くと先程置いた傘がどこかへとばされている。それにダンボールも横に倒れていた。
嫌な予感が胸を締め付けた。
走ってその場にむかうとそこに子犬の姿はなかった。
恐らく風でダンボールが倒れ子犬は外へでたのだろう。
こんな雨の中どうやって生きて行くのだろう。
僕はそんな子犬に生きる強さを見た。
僕はタオルをダンボールの中へ畳んでしまうと、その場を離れた。
あの場所へあの子犬が生きて帰ってくることを信じて。
~END~
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