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幼い頃、俺は何でも一番だった。
誰よりも速く走れたし、誰よりも早く計算を解けた。誰よりも早く魔法を使えるようにもなったし、誰よりも上手く剣を扱うことだって出来た。
「天才」だの「神童」だの言われて、そりゃあチヤホヤされたものさ。
けれど、それだけだ。
成長するにつれ、俺は色々なことで一番の座を明け渡していった。
俺より足が速くなった奴がいた。俺より難しい計算を解けるようになった奴がいた。俺より高等な魔法を使えるようになった奴がいた。俺より強力で重い武器を軽々と扱えるようになった奴がいた。
何てことはない。俺はただ単に器用なだけで、何においても平均より少し上なだけだったのだ。
「天才」でも「神童」でもない。
出来ない奴よりは出来る。
出来る奴よりは出来ない。
何でも出来るが何にも出来ない。
結局、ただそれだけの男だった。
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