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ファルスの町に一軒の宿があった。そこはいつも賑わい、いつも満室状態だった。
その宿を経営してるファイス一家に、一人娘のレイチェルがいた。彼女は魔法学校を卒業した、正式な術使いだった。しかし、宿の仕事の方が多く、術を使う時などほとんどなかった。
レイチェルが宿の掃除をしていると、母が声をかけてきた。
「レイチェル、今日はもういいわ。ご苦労さま。」
「いいの……?」
母は笑顔で笑ってみせた。
「じゃあ私、森に行ってくる!ちょっと心配な子がいるから…。じゃ、行ってきまーす。」
レイチェルは町近くの森にやってきた。すると、森の動物たちがレイチェルに走りよってきた。
「みんな元気?……あの子のケガは大丈夫?」
レイチェルの言葉がわかっているのか、動物たちはコクリと頷いた。
その時、動物たちが何かを感じたのか、突然逃げだした。
「みんな、どうしたの……?どこに行くの?」
レイチェルは一羽の鳥のあとを追った。その鳥は木々の間を通り抜けていく…。木々の枝を手でよけながら、必死に鳥のあとを追いかけた。
木々が途切れて、ひらけた場所に出た。大きな湖がそこにあって、大きな木と小さなログハウスがたっている。
そしてそのそばに、険しい顔をした一匹の白い狼がたっていた……。
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