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「あ……白い、狼…?あなたが町で噂の?」
白い狼はじっとレイチェルを険しい顔で見ていた。
「あなた、お名前は?」
そう言ってレイチェルは白い狼に触れて、目を閉じた。
話したい動物に一度触れると、心が通じあって、言葉がわかる、不思議な力を彼女は持っていた。
「…?……あなたの心、わからない。どうして?」
レイチェルは目をあけて、不思議そうにそう言った。
「―――。」
ふと誰かの声が聞こえた。あたりを見まわしても、他には誰もいない。ここにいるのは、彼女と……この白い狼だけ。
「―――おまえ、『精霊の愛娘』だな。」
やっと誰の声かを理解したレイチェルは驚きの声をあげる。
「えっ!?……あなた話せるの?」
「…まぁな。……それにしても、ここに来る者が精霊の愛娘とは…。」
「……精霊の、愛娘?」
レイチェルは首を傾げた。
「おまえ……動物の心、わかるだろ?そういう能力を持つヤツは、数少ないんだ。」
「動物と話せるのって、珍しいの?」
白い狼はコクリと頷いた。
「おまえのような能力の持ち主を、我らは精霊の愛娘と呼んでいる。」
「?……我らって?」
白い狼は彼女の問いに答えず、青い空を見上げ……ポツリと呟いた。
「―――いつになったら、戻れるんだろう。」
白い狼の声はとても寂しげに聞こえた。
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