1章~二人の出会い~

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  レイチェルと白い狼は湖のそばに座ったまま、何も語らなかった。 いや……彼女の場合は、話しかけづらかったのだ。さびしそうな顔でじっと空を見あげる彼に……どうしても話しかけられなかった。 空はオレンジ色に染まりつつあり、遠くに見える太陽が沈みはじめていた…。 「――なぁ、町でのくらしって……楽しいか?」 「え…?楽しい……けど?」 突然彼の方から話しかけてきたため、少々驚いたが、レイチェルは答えた。 「――そっか。オレも、早く戻りたいな……。」 それきり彼は、また口を閉ざしてしまった。 「ねぇ。ひとつ聞いても……いい?」 おそるおそる話しかけたが、彼は意外にも、こっちを振りかえってくれた。 「ん?……何?」 「名前。あなたの名前……教えて?」 白い狼は視線を空に戻し、また黙り込んでしまった。 「ダメ……なの?」 白い狼は答えない。 「……。私はレイチェル。レイチェル=ファイス。」 レイチェルはさびしそうに自らの名を言った。 しかし、彼の反応は……ない。 レイチェルは立ち上がり、ため息をついた。 「じゃあ私、家に帰るね。」 レイチェルが彼に背を向けたとき……ふと声がした。 「――アキラ。……アキラ=ゲイツハルト。それがオレの……名前。」 風が吹いて、レイチェルの髪と白い狼……アキラの白い毛が、風にゆれた。
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