タイムトラベル

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しかし、SFがタイムトラベルという概念を生み出したわけではない。 「時間という制約を超えて、過去や未来に行きたい」という願いは、人類が「時間」という概念を認識して以来、おそらく普遍的な願いとして存在していたものであり、SFというカテゴリが明確なものとして育つ以前より、タイムトラベルをテーマにした物語は語られてきた。例えばダンテの『神曲』では、主人公は古代ローマの詩人ウェルギリウスと直接対面するが、これを過去へのタイムトラベルと解釈することは可能であろうし、また、始皇帝の昔から求められてきた「不老不死」への願望を、長い長い時をかけた未来へのタイムトラベルになぞらえて理解することもできよう。 そういったもともとの背景をもとに、産業革命以降の科学技術の発展、そこから生まれたSFというカテゴリの成長が、さらにタイムトラベルという考え方を物語の類型のひとつとして育てることになったと言えるかもしれない。
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