プロローグ

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「さて、どうしようかな」少年は初めて見るしらはない街を歩いていた。何かしなくてはいけない、何をすればいいのだろう、その答えを街に探しに来たのだ。 この街は、まるで迷路のようだ。右が左か、知る人もなく、不安が重なったその目に映る街は、何か少年を拒否するかのように思え、少年は自分が場違いなところに来てしまったように感じた。 しばらく歩くと駅が見えたので行ってみると、切符売り場の真上に各路線の運賃表がこれでもかという大きさで、これまた迷路のように表示してある。 アミダくじのようにその線をたどると、さすがに有名な駅名が沢山あり、少年は、都会に来たことを実感した。 この街ならなんでも出来そうな、そんな気がしてきた。つい先ほどまでの迷路は晴れ、少年は、この街に来た目的を思い出した。 学歴のない少年は漠然と、手に職を付ける仕事を考えた。まさにその場の即興で選んだ職業は、美容師だった。 少年は早速、美容専門学校と、そこからそう遠くない職場を探すことにした。求人誌を買って家に帰る事にした。途中、電話BOXでタウンページを調達した。人生とは、まぁ、こんなものだろう。 少年の住まいは荘の付く六畳一間のアパートだ。そこに二つ年上の姉と母親の三人で生活している。父親はいない。風呂なしアパートであるから家賃はお手頃だ。すぐ近くにある銭湯に通うのだが、毎週火曜日は銭湯の定休日なので地獄だ。 姉と母親の仕事はすぐ見つかり、姉はルート配送、母親はタクシー運転手の職に就いた。少年も少し遅れてスーパーマーケットの青果売場でのアルバイトをしていた。タウンページで見つけた美容専門学校から近いからだ。何はともあれ少年の生活が始まった。最初の半年で貯金を作り出し専門学校に通う事にもなり、勉強して、アルバイトして、海に行って、飲みに行って、数人の友達と恋人もでき、第一の目的に向かっていた。少年の目的とは、 (アイツ(母親)から離れる!!)事だ。
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