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キィ
キィ
キィ
ゆらゆら揺れる
心地よい揺れ
煩しく感じない音量で流れる壮厳な音楽は、子守歌のようでもあった。
瞼を僅かに開く。
光と共に、飛び込んできたもの。
装飾の施された大きな額の中にある、一枚の絵画。
翼の生えた天使。
空に浮いている天使の足元には、天使に縋りつく女性から伸びた二本の手。
何故だか、あたしには、それが天使を引きずり落とそうとしている手に見えた。
此処は何処?
あたしの部屋じゃない。
ふかふかのクッションが置かれた揺椅子に、座らされていたあたし。
腿から足にかけて、赤いベロアの膝掛がかけられていた。
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