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手荷物の中身などを何の気なしにいじったりしているうちに、10時半になった。
ふと周りを見回すが、太一のものらしき車は見当たらない。
ぶるるるるっ
太一からの電話だ
「ごめん、瑠璃、ロータリー車いっぱいで入れないから、駅からちょっと離れた所に車を今止めてあるんだ。」
「え、どこ?」
「荷物大変でしょ?今友達が迎えに行ってるから待ってて!」
「へ?友達?」
「あれ、雅から聞いてないの?人数、男女均一でないとバランス悪いからって、俺の友達に声かけさせられたの。しかも前日にね!」
そんな話しを携帯越しに聞いて驚いている私に、声をかける人がいた
「…瑠璃さんですか?」
振り返るとそこには、背は高いが華奢な顔と体つきで、肌は色白なのに不釣り合いな、不精髭を生やした青年がいた。
彼を見た瞬間、何か頭を叩かれたような衝撃と、目の前が霞むような眩暈が私を襲った。
勿論体調は悪くなかった。
何故かその青年がすごく美しいものに見えて、まっすぐ目を合わせられず、目を泳がせてしまった。
「あ、はい、そうです。」
「太一くんの友達の藤井です。宜しくお願いします。あ、荷物、持ちます。」
「こちらこそ、宜しくお願いします。あ、に、荷物ここまで自分で持ってきたので平気です!」
そういってそそくさと歩きだした。
何故か慌ただしい気持ちになっていた。心がざわっとして、脈拍があがり、頬がのぼせて、下を向きながらしか話せない。
視界も妙に狭いし、まばたきも増えている。
なんで?何、これ?!
私、急にどうしちゃったの?!
動揺している所に、藤井くんが駆け寄ってきて、ワインの紙袋と荷物をひょいと取り上げた。
「…車は、こちらではなくて、あっち側。」
…家の方角へずんずんと向かっていた私を、正しい方へと連れていってくれた。
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