46人が本棚に入れています
本棚に追加
4~勇~
金曜日の夜という事もあり、BAR、LINESMANは混んでいた。
ここは薄暗い店内の壁に最新の大型液晶テレビがかけてあり、いつも酒を飲みながらサッカーの試合が見られる。
不定期に行うフットサルのメンバーとの、行きつけの店だ。
今夜は瑠璃と、フットサルのキャプテンである太一、キーパーの雅と共に飲む約束をしているのだ。
仕事が思いの外片付かず、俺が一番最後の到着となった。
三人はテレビからは離れた、一番奥のソファー席を陣取っていた。
「勇、遅いぞ!」
キャプテンの太一は、高校時代靭帯を切る怪我をするまでは、一年の時からレギュラーだった程にサッカーには熱がこもっていた。
今だに体育会系の名残なのかなんなのか、髪は実に短めだ。
「公務員も楽じゃないな。」
雅は女に比較的モテる、典型的な優男。
髪もちょっと長めで、スーツも細身を着こなしたりカフスリンクをつけたりと、ニクイやつだ。
「お疲れ様。」
瑠璃。俺の大学時代からの彼女。しっかりしていて、横顔も凜として美しい、自慢の彼女だ。
「悪い悪い。国民の皆様に支えて頂いて、頑張ってますよ。」
コロナを注文しながら席に着く。
「瑠璃ちゃんから聞いたぞ。ゴールデンウイーク、暇させちゃうみたいじゃん。」
太一がちらりとこちらを見ながら言う。
「瑠璃ちゃん借りてもイーイ?」
爽やかに笑いながら雅が言う。
「はいはい、どーぞ!…ってなんで?」
話を要約すると、どうやら瑠璃の職場で合コンを切実に願う女子が、二人も居るらしい。
一人は今年の新人で彼氏がいない久保加奈子という子。もう一人は昨日の昼に社内の不倫相手に呼び出され、突然フラれたという瑠璃の一歳年上の先輩、西英恵だそうな。
昨日の今日でコンパ求めるなんて、後者は単なるヤケクソだろ、おい!汗
「いいけど、なんでそれと瑠璃が関係ある訳?」
「だーかーらー!」
と雅が説明しだす。
「せっかくのゴールデンウイークに、可愛こちゃんを三人も放っておいたら罰当たりデショ?その子羊ちゃん二人を俺らに引き合わせてもらう為に、瑠璃ちゃんにお力添えいただいちゃう訳よ!」
成る程。合コンをそのメンバーでやる訳ね。
まぁ瑠璃も大学時代から知ってるこの二人となら、心配ないか。
「おー、楽しんでこいよ。」
承諾しちゃったよ、俺。
よく考えたら俺一番かわいそくね??
最初のコメントを投稿しよう!