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誰もいない廊下を見て、清彦は少し怖くなった。生徒の数は日に日に減っている。いずれは……。
放課後に二人は保健室に向かった。茜はベッドの中で小さな寝息をたてて寝ていた。
「死んでないよな?」
「あほか。つーか起こしたら不味いよな。先生もいないし」
「置き手紙を書くか」
ルーズリーフを一枚取り出して謝罪の言葉を書いた。ちゃんと後日改めて謝りに来るとも。そして茜を起こさないように静かに退室した。
放課後は部活がある。清彦と弘は急いで音楽室に向かった。音楽室に近づくにつれてサックスの音色が聞こえてきた。
「先輩だ」
「沙耶はまだかな」
弘の一言で清彦は立ち止まった。
「どーしたー?」
「……沙耶は来ないかもな」
沙耶とは『安達 沙耶』のことだ。清彦と同じ一年で吹奏楽部員の一人でもある。パートはアルトサックス。とにかく明るくて部のムードメーカーだ。
「またケンカしたのか?」
「あいつマジギレだったからな」
沙耶が泣くなんて。
「只でさえ人数少ないんだから部活の雰囲気悪くするなよー」
「お前に言われたくないな。早く先輩に謝りに行ってこい」
「わかってるよ」
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