プレリュード~序曲~

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「うぃっす!」  聞き慣れた声。低血圧仲間のアイツだ。『矢沢 弘』は少し息が荒かった。寝坊して走ってきたのだろう。茶髪で黒ブチ眼鏡が印象的な男だ。成績、運動神経、ルックスは清彦より上だ。清彦曰く「だらしないが無駄にモテてワザと敵をつくるタイプ」らしい。 「うぃっす」  清彦はにかんで答えた。すぐに違和感に気づく。 「寒いなー。寝坊して朝練すっぽかしちまったよ」  とんでもないことを悪気もなくサラッと言ってしまう男でもある。 「お前ーまたかよ!」  朝練とは吹奏楽部の朝練習のことだ。訳あって今は四人しか部員がいない。でもその四人は皆サックスパートなので、アンサンブルの練習をして活動を続けていた。清彦と弘はその中の二人だ。弘は高校になって楽器を始めた。最初はクラリネットを吹いていたが、部員が減ってからはバリトンサックスを吹き始めた。清彦はテナーサックスだ。中学の頃から続けているので、中々の腕前ではある。 「お前さぁ、先輩がせっかく練習教えてくれるっていうのにそりゃねーだろ」 「分かってるよ。反省してるし、今日の放課後はその分練習するって」 「とりあえず謝っとけよ。多分先輩は音楽室で待ってると思うから」
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