プレリュード~序曲~

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 先輩の名前は『井上 千秋』。パートはソプラノサックスで清彦と弘の先輩である。部活の部長を勤めていて、責任感も強く頼れる先輩だ。弘曰く「ちょと天然だけど、優しくて飽きない人(いじられキャラという意味で)」らしい。  弘はバリトンサックスを吹き始めてまだ日が浅いため、他の3人より練習をしなければならなかった。だから、千秋は弘を朝練に誘ったのだ。弘が朝練をすっぽかすのは今日に限ったことじゃなかった。時間にルーズな男ではないが、朝が異様に弱いのを知っていたので、清彦は半分諦めていた。  そうこう話ながら学校に向って行き、なんとか歩いて校門をくぐれる時間に間に合った。  私立道玄高校は普通校ではあるが、科の種類が多彩なことで有名だ。だから、いろんな種類の生徒が集まっていて、文化祭は周辺のどの高校よりも活気があって面白い。  教室に入るとすぐにチャイムが鳴った。担任が出欠の確認を無言で行なった。欠席者9名。また1人減ってしまった。恐らく例の病気だろう。不意にクラスメイトの視線が弘に向けられた。弘はそれに気づいているはずだが、見えていないふりをしていた。清彦は胸が痛んだ。弘は何の関係もないのに。
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