混血者(ダンピール)の異変

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日はすっかり高くなり、時刻は正午を迎えていた。 昼食を摂っている薔薇とルーファは、先程から無言だ。 食事にもあまり手をつけていない。 「どうした? しっかり食わんと保たないぞ?」 「…あまり食べたくないです」 「………」 「………」 それから2人は、お互いに黙り込み、気まずい空気に包まれた。 ― ありゃ相当痛手だな…。 食事を終えたルーファは、屋敷内をウロウロと歩いていた。 先程の薔薇の様子を見て、心配そうな面持ちをしていた。 「なぁ、マリウス様が“薔薇”になったって知ってるか?」 「知ってる知ってる。マリウス様、相当驚いてたみたいよ」 使用人達の会話が聞こえ、ルーファは思わず立ち聞きする。 「そりゃ無理もないさ。マリウス様が魔界の半分を壊す程の魔力が見込まれて、“薔薇”に任命されたらしいけど、それだけじゃなくてルーファ様が【混血者】って事で除外されたらしいぞ?」 「…!?」 ルーファは、全身から血の気が引く違和感を感じた。 「そもそも【混血者】が“薔薇”になるなんて、異例だったんだよ。今の大総統は“【混血者】は不純だから好きではない”と言っていたらしい。ルーファ様を“薔薇”に推薦した時は、周りの強い要望で渋々承諾したみたいだぞ? ま、【混血者】が純血の【吸血鬼天使】の魔力に敵う筈ないけどさ」 ドクン…! その時、ルーファの中で“何か”が芽生える。 それは怒り。 悔しさ。 憎しみ。 そして嫉妬。 ― 俺が純血の【吸血鬼天使】だったらよかったのか…!? いや、魔力が違うからなのか…!? 心の中で葛藤するルーファ。 そして、遂に。 ― ならば、力で証明するまで…! 俺から“薔薇”の座を奪ったマリウス…。いや、薔薇から、魔力を奪っでも証明してやる!! ルーファは拳を握り締め、翼を広げ、窓を突き破って蒼穹へと飛び立っていった。 
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