愛する人を失った時

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シェロンの死から1週間。 薔薇はヴァチカンにある、【薔薇十字団】総本部の敷地内にある墓地に来ていた。 『シェロン・リベール(1931~1950) ここに眠る』 シェロンには家族がおらず、一家の墓もない為、【薔薇十字団】総本部の敷地内の墓地に埋葬されている。 「私がもっと早く迎えに行ってれば、貴女はこんな目に遭う事はなかったのに…」 薔薇は胸に手を当て、深く一礼する。 「薔薇…」 百合の花束を持ったルシェンネが薔薇の元に現れた。 ルシェンネはしゃがみ、そっと墓石に花束を供え、十字を切り、手を組んで祈りを捧げる。 「シェロンの死は、アタシにも責任があるわ」 「何故ですか?」 「貴方が“奴等”と戦う時、アタシは一時戦線離脱した。その時アタシが屋敷を守っていれば、シェロンはこんな事には…」 ルシェンネの瞳が涙で潤む。 「貴方には責任はありません。全ては私の責任です」 「でも…!」 「シェロンと【契約】してから、私にはシェロンの守護義務が課せられていた。それが出来なかったという事は、責任は全て私にあります。貴方が自分を責める必要などありません」 そう言うと、薔薇は背を向け、墓地を後にした。 廊下を歩いていると、窓からは眩しい日差しが差していた。 ふと窓を見ると、青空には鳥が羽ばたいている。 そんな風景を見ていると、シェロンと一緒に晴れ渡った空を見た時を思い出し、切なくなる。 ― 私は壊すだけで何も守れない…。【契約】した者を不幸にしてしまうだけ…。 自分に対する歯痒さが募り、思わず壁に拳を叩き付ける。 「最低ですね…。只の疫病神じゃないですか…」 薔薇の頬に、一筋の軌跡を描いて涙が流れる。 そして拳を握り締め、怒りと悔しさを露にする。 ― もう、【契約】はしない…! 私は、この醜い戦争を、私自身の手で終わらせる! この命に代えてでも…! 顔を上げ、立ち直った薔薇の瞳は、決意と同時に、悲しみに満ち溢れていた。
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