混血者(ダンピール)の異変

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魔界を後にしたルーファは屋敷に戻り、マリウスをベッドで休ませていた。 ― あれが、マリウスの魔力…。 先程のマリウスの魔力は、ルーファにとって想像を絶するものだった。 解放してから1分もせずに、魔界の半分を死に至らしめた。 同時に、魔界の王に深手を負わせる程の力を持っている。 ― まさか、お前…。 今は疲れて眠っているマリウスだが、先程のマリウスを思い出すだけでも、恐ろしいという気持ちが込み上げてくる。 「ルーファ」 部屋に中年ぐらいの男性が訪ねてきた。 「父上…!」 「話がある。少しいいか?」 「…ああ」 ルーファは椅子から立ち上がり、部屋から出ていった。 「っ…」 マリウスが目を覚ます頃には、外はすっかり日が昇っていた。 「此処は…、そうか…。戻ってきたんですね…」 深く溜め息を吐き、身体を起こし上げ、ベッドから降りる。 多少はふらつくものの、なんとか立っていられる。 部屋から出ようとした刹那、静かに扉が開いた。 扉の向こうにいたのは、ルーファだった。 「ルーファ…!」 「具合はどうだ?」 「ええ、お陰様で…。ところで、どうしたんです? 怖い顔なんかして…」 「何でもないさ。“薔薇”」 「…はい?」 「“薔薇”のお陰で、魔界の王は“人間狩り”を中断したそうだ」 「ちょ、ちょっと待って下さい! さっきから“薔薇”と呼んでますけど、何ですか? いきなり…」 「お前は今日から“マリウス”じゃない。“薔薇”だ」 「次期“薔薇”は貴方だった筈では…!?」 「【薔薇十字団】の大総統がお前の実績を知って、こういう結果となった。お前は、俺よりも強力な魔力を持っている。お前が適任だと判断された」 「そんな…! 何故突然…!」 「お上が決めた事だ。詳しい事は父上から聞いてくれ。俺は昨日から寝てないから寝る」 そう言うと、ルーファは部屋から出ていった。 「私が…、“薔薇”…!?」 動揺する薔薇の中で、複雑な気持ちが渦巻いていた。    
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