141人が本棚に入れています
本棚に追加
真っ白い空間の中で、少年は手にした鉛筆で線を描く。
まっすぐな線、まがった線をかき、顔、衣服、髪をつけ加えていく。
「…できた」
少年は鼻息を荒くし、納得したようにつぶやいた。
描かれた魔女は手にほうきを持ち、黒く塗りつぶされたローブを着ている、髪の長い女性だ。
今はデザインを描くことしかできない。
実体化させるには、卵か、その他のものが必要だった。
「…卵ができるまで、寝てようかな♪」
少年は地面に倒れ込むと、そのまま目を閉じて眠った。
ざぁぁあ…
大雨の降る音が聞こえた。
「…」
少年は目を覚ますと、上半身だけを起こした。
体の節々が痛い。ずいぶん眠りについていたようだ。
今は太陽がでているだろうな。と少年は思う。
眠りについたのは夜だった。
10何時間も自分が寝れないことは知っている。
少年は外にでると、降りかかってくる大粒のあめにたじろいだ。
「ぅあ」
両手でカバーして、視界を守る。
遠くは霧で白くぼやけていて、身の回りは雨が強すぎて認識しずらい。
少年は目に水が入らないよう、視界を守りながら、回って当たりを確かめた。
森の木々は大粒の雨と強風で木々が揺れている。
野原の芝は雨に埋もれて巨大な水たまりがあちこちにできている。
「…卵は?」
少年は森に入ろうとしたが、足を進めるのを辞めた。
ーめんどくさいかも。
そう思ったその時。
「卵をさがすのかい?」
空が少年に話しかけてきた。
「…そうしようと思ったんだ。けど、あの森の中はめんどくさそう」
少年は森を見て、空に言った。
「そうかい。卵が一つできてたみたいだけど…。
持ってきてあげるよ。」
空はそう言って、風で卵を転がし、少年の目の前に持ってきた。
「ありがとう!!」
少年は喜ぶ。
「どういたしまして。」
少年は卵を抱えるとさっそく家の中へ持ち込んだ。
そして、前にかいた魔女のデザイン画に大きな卵を投げつけて割った。
最初のコメントを投稿しよう!