創造する者

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夢の中で、 おいしそうなきのこをみた。 ピンク色で、 一本だけ道に生えている。 ぼくの広げた手ほどの大きさ。 僕はゆっくり近づくと、 そのきのこを慎重に 人差し指で軽くつついた。 そこで夢が覚めた。 ジリリリリリ‥ ーおかしいな。 目覚まし時計なんてないのに。 僕は目を覚ますと、 そこは真っ白な 画用紙一枚の世界とは 違っていた。 足にかかる ふかふかなふとん。 お尻にあたる 暖かいマットレス。 上を見上げれば、 鈴蘭のような白い電灯に、 窓を隠すピンクのカテーン。 「…僕はまだ指示してないよ! 創造主は僕だぞ!!」 僕は 風景を勝手に書いて 居なくなった 誰かに叫んだつもりだ。 聞こえてないだろうけど。 「~」 僕は足をバタバタさせて しばらく暴れた。 もちろん真っ白なあの家の中には 戻らないけど。 すると 急に左横のドアが開いた。 「起きたんですか。 おはよう僕。 お布団ほすから、 どいてどいて。」 おばさんが片手を仰がせる。 おばさんは犬か猫みたいに、 僕をふとんから追い出そうとしている。 僕はしぶしぶそこをどく。 そして、ベッドのふとんを 腕の中へ積み重ねている、 白い三角ずきんのおばさんに聞いた。 「あなたはだれ?」 「あなたの召使いです。」 おばさんは答える。 「僕はそんなの創造してない。」 僕の言葉におばさんは、 「僕、きのこを触ったでしょ」 と言った。 「触ったよ。 夢の中でね。 そうだ! 夢に入る前に、 僕はお空さんに 雨を降らしてって頼んだんだった。」 「雨なら降ってますよ。 もう、ざあざあ。」 ピカッ いきなり、 ピンクのカーテンが 光ったと思うと、 ゴロゴロゴロゴロ… 地を揺らすような音が 鳴り響いた。 「…」 僕は黙って その音を聞いていた。 「お布団ほしますから」 おばさんが言う。 「う…うん」 僕は頷く。
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