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> 乾燥し切った荒野を放浪していた界無にとって、少し荒れているとはいえ川沿いの草原を進む事は視覚的にもいくらか楽だった。
幸いにも頻繁に引き起こる地震や突然の天候の変化もなく、今の状況だけ見れば、まさか此処がかの西の大地だとは思いもしない。
川沿いに歩を進め、先に見える森を目指す。さほど距離もない、今度こそ情報通りに森を抜けた場所に例の人物がいればよいのだが……当てもなくさ迷い続けるのも骨が折れるものだと。
せめて戦える何かに出会えていれば、こうも退屈しなかったのだろう。
そもそもこの地では他では見る事のできない珍しい竜や、厳しい環境を生き抜く事によって格段に強くなったモンスターが現れるはず。
今まで一度もそういった生き物を確認できないのも奇妙な話だった。
(やはり……クライガムがこの地でも何か目論んでいるのかもしれんな)
いつか、あの組織には制裁が下るだろう……いや、この手で制裁を下すと。
ふと、風がざわついた。
どこからか咆哮が轟き、空気を震わせる。
「あれは……」
自分の姿が影に覆われ、頭上を巨大な真紅の竜が通り過ぎたのは一瞬の出来事。
だが、その竜はそのままどこかに飛び去る事もなく、急にガクッと高度を下げた。
よく見るとその身体には無数の傷や弾痕があり、今まさに何かから逃げているようにも見える。
その姿をじっと見ていたのだが、不意に後方から人の気配、自分に向けたものではないが殺気を感じて振り返った。
同時に無数の銃声が響き渡る。
そこには簡易な同じ鎧と同じ格好をした集団がボウガンを構え、その竜を墜とさんと躍起になって銃撃を繰り返していた。
ろくに狙いも定めていないようだが、それでも高度の落ちた巨大な標的に当てるのは容易だろう。
間もなくして真紅の炎は地に墜ち、火花を散らすように激しく翼をバタつかせている。
一方的な攻撃を加えた彼らは界無の横を通り過ぎ、逃げ出そうとする竜に再び銃口を向けた。
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