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必死に追っていた真紅の竜が逃げてしまった事にも気付かない、時が止まってしまったように立ち尽くす集団へ、界無は歩み寄る。
「解せんな、何故、この地を恐れない?」
「…………」
「制裁を恐れないか? 神の住まう地の支配者のつもりか?」
「…………」
界無は目の前に立つ一人に切っ先を向けた。
「愚者め、お前達のような……」
途中で言葉を繋ぐのを止めた、周りにいた者達は我に返ったように、時間が動き出したように、ようやく界無に対して敵意見せてきたのだ。
それぞれがボウガンをその場に置き去り、大小さまざまな刀剣を手にしている。
「フ、フフ、愚者は貴様だ、クライガムに敵意を向けるとはな」
「クライガム、ならば、遠慮しなくてよいな」
「ずいぶんな自信だなぁ、我々を敵に回して……」
先程気圧された彼らはどこにやら、数で勝るのが自信になっているのだろう。
ゆっくりと界無の周囲を取り囲み、いつでも斬り掛かれるように皆が身構えている。
「後悔してろよ、アンタ、死んだな」
正面から切っ先を向けられていた一人が引き抜いた剣を突き出すと同時、待っていましたとばかりに次々と界無に刃が襲い掛かる。
「…………」
迫る刃に身じろぎもせず、ただ静かに、彼はゆっくり瞼を閉じた。
「……遅い」
つまらないと、界無は二つの刀に、手を掛けた。
やはり、つまらないと、うっすら瞼を開く。
「愚者共、貴様らには猶予など与えん」
ゆらりと動き、腰を捻りながら少し手を動かす。
一閃、界無の鞘から何かが閃いた瞬間、彼を中心に凄まじい風が巻き上がり、殺到したその全てを吹き飛ばしていた。
たった一動作、一薙ぎにしただけで数人は気絶しながら宙を舞う。辛うじて意識を留めていた者も何が起こったのかわけが分からず、呆然と空を仰ぎながら地面に激突した。
「!? ぐっ、かはっ……何が、どうなッ」
鎧武者の姿が日の光を遮り、意識のある一人の視界が影になる。
「…………」
界無は何も言わず、ただ見下ろす。
兜によって表情が伺えないその姿は武神の如く、見下されている方は恐怖とも似つかない巨大な威圧に押し潰されていた。
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