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「ノエル姫」
「断る」
長い銀の髪を高く結い上げた細身の女性、ノエルはきっぱりと言い放った。
「まだ何も言っていないぞ」
長身長髪、長い耳を持つ男性はこれでもかと言わんばかりに眉尻を下げる。
「聞く必要などない」
「いや、まずこれを言わないと私の一日は始まらないから」
苦笑いを浮かべながら男性は乗っていた黒馬を下り、素早くノエルの両手を取った。
そのノエルから男性に向けられる視線はすこぶるきつい。そう思わせるのは眉山の角度が鋭い所為だけではない筈だ。
「貴様の一日など知らん。失せろ」
ノエルはふん、と鼻を鳴らすと、彼の手を振り払い、背を向ける様にして歩き出す。
しかし彼はめげずに大股で一歩踏み出し、振り払われたばかりの白く細い手首を掴む事に成功した。
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