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「私と結婚してくれないか?」
「断る」
プロポーズの場面にしては情熱を感じさせる気配が全くないのは、二人が幾度となく同じ台詞を繰り返し、既にマンネリ化している為である。
「何度も言ったが、男に興味はない」
ノエルは抑揚のない喋りで吐き捨て再び男性の手を、先程よりも勢いよく振り払うと、今度は魔法を使って消えてしまった。
「相変わらず、か」
一人残された男性、ここウェリス大陸大森林の軍を率いる総大将であるティリュース将軍は、ノエルが消えた辺りの砂利道から顔を上げると、木々の隙間の狭い空を眺めながらやれやれと息をついた。
とんだ邪魔が入った、とノエルは細く入り組んだ獣道を歩きながら眉間に深い皺を刻んでいた。
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