🍌2008年のやす詩🍌

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【グローブ】 部屋中散らばるおもちゃ箱 どのふたを開けたって あなたからのプレゼントは見つからない 遠き日の日記帳 どのページをめくっても あなたの名前は見つからない 何も与えてはくれないと 心の中で幾度も 愚痴をこぼし、憎み やがて私は家を出た 欲しいものを 夢中で追い続け 振り返れば 掌の中には家庭があった 目の前の小さな両手に 全てを与えようと 生きる時間を その為だけに費やすようになっていた 辛い時なぜか不意に あなたの顔が 頭に浮かんだ そして気付いた時には 頬を涙が伝ってた 母よ あなたの時間を奪っていたのは私だ かっこいいおもちゃも 楽しい旅行も 私に与えてはくれなかったけれど かわいい洋服も 素敵なデートも あなたは求めはしなかった 金で買えるものよりも もっと大切なもの 私は与えられていた あなたの人生そのものを 真夜中私は 無意識に電話を手にとった 寝起きのあなたに 不意に告げた 「ありがとう」 突然のコールにも あなたは優しい声で 私の体を気遣かった 受話器越し ようやく あなたとキャッチボールができた 母よ 遠き日に あなたとするために 必死でお金を貯めて買ったグローブは 隣で眠る小さな体に 与えることにしようと思う
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