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青年は、一心不乱にキャンバスに向かって筆を振り続けていた。この作品を最後にしよう…青年は決心していた。
青年の心は告げる。
青年の脳裏に過去が甦る
思えば幼年期に描いた一枚の絵画、あれが青年の一生を狂わせた。
まだ幼いとも云える当時の青年、否、少年の描いたその作品は少年の知らぬ内に少年の生涯を決定付けてしまったと云えるだろう。
ある大人は言った。この子の作品を見ろ、なんと独創的であろうか。この子は天才だ。
またある大人は言った。この色彩感覚を見ろ、なんと云う美的感覚であろうか。この子は天才だ。
またある大人は言った。この子の描写力を見ろ、なんという再現度であろうか。この子は天才だ。
大人達は口々に少年の作品を賛美した。
まだ幼かった少年の内心も穏やかではなかった。
僕の描く作品を見て大人は喜んでくれる。
僕が作品を描く度に大人は褒めてくれる。
大人達の云う通り、きっと僕は天才なんだな…
それからの少年は自分の道を誰とも無しに決め、画家への道を歩み始めていた。
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