遺された絵画

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少年はやがて成長して行った。少年の道は既に決まっていた。 僕は画家になるのだ。 そして、その通りに少年は絵の道を志し、美術学校へと進み、やがて青年へと成長して行った。 私は画家になるのだ。 しかし、少年の時代に思い描いていた未来は脆くも崩れ始めた。 美術学校に集まった画家の卵達。青年も所詮、その卵の一つに過ぎなかった。 ある卵は早々とその才能を孵化させて、画壇へと羽ばたいて行く。しかし、青年の殻は固かった。少年の頃からの自分の才能を信じてきた青年であったが、青年の周囲の卵達も同じ思いを持った者達の集まりであった。 自分だけは周りと違うのだ。自分は天才なのだ。そう信じて筆を振るう青年ではあったが、他の者達も同じ思いでいる事を知った時には既に遅すぎた。 やがて、青年は美術学校を卒業して社会へと巣出って行った。 しかし、自分の才能を信じて、画家になる事しか考えていなかった青年は自分を信じて絵を描き続ける事しか道は無かった。 自らの才能と心血を注ぎ込み絵を描き、画商に持ち込む日々が続いた。
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