遺された絵画

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青年の評価は爆発的に世界中に広がって行った。 絵画コレクター達は、我先にと青年の遺した絵を買い漁った。 少年期の作品。 不遇に過ごした青年期の作品。 幼年期の作品に迄それは及んだ。 今や青年の遺した絵の数々は天井知らずの値を付け、生前は得る事の無かった青年への評価は正に天才と言われるまでに膨れあがった。 やがて、一枚の絵が人々の話題の的になった。青年が最後に遺した絵である。 コレクターのみならず、世界中の美術館、美術商がその絵に注目し、欲した。 やがて、その絵はオークションへと懸けられた。生前の青年がけっして手にする事の無かった金額で、ある大国の美術館へと渡って行った。 やがて厳重に管理され、その国の目玉として絵は一般公開された。 美術館に詰めかけて我先にと絵を見る人々。来訪する各国の政治家、要人達が招待され観賞して行った。 人々は知らない…その絵に込められた青年の思いを… この絵を見る全ての人々に… 災いあれと… 災いあれと… 災いあれと… そして、青年のその思いは誰にも気づかれる事無く、深く…静かに…絵を見た人々全てに浸透していった。 やがて、絵を見た各国の政治家が、人々が災いを世界中に……
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