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部屋に灯る蝋燭の光が、隙間風でゆらゆらと揺れ動く。
男の前に、少し足を崩しながら座る女…
紅色の華吹雪の着物を纏い、着物から雪の様に白い肌が姿を覗かせる。
綺麗な長い黒髪がとても印象的で、高く通った鼻筋に、全てを見透かした様な黒く輝く瞳が男の胸を高鳴らす…
「どんなご用件で?」
美しい声で女が男に問いかける。
男は緊張の色を隠しながら、
「私は、灰来村の仁平と言います」
「仁平さん。私は蘭と申します。よろしく」
赤い口紅を塗られた美しい口で、ささやく様にして蘭は答えた。
仁平はごくりと喉を鳴らし、一旦自分を落ち着かせると、蘭を呼んだ用件を話し始めた。
「実は最近妙な事件が起きているんです」
「妙な事件?」
「はい…蘭さんを御呼び立てしたので大体理由は分かると思いますが…」
「それはどんな?」
「ええ…最初に事件が起きたのは先月の話です。村の若い男が町へ出掛けたきり帰って来なかったのです…」
「…」
「その数日後、男は村の近くの川辺で死体で発見されました」
「それで?」
「その男の死体が奇妙でして…」
「奇妙?」
「えぇ…手足は胴と離れ、首がなく…心臓までも抜かれていたのです」
「ふーん…」
蘭は仁平の話を聴くと、少し考えた様子で話始めた。
「その事件の他にも、同じ様な事件はありましたか?」
「その事件の後、男が一人と女二人が同じ様に殺されて発見されています…あれは人の手で出来る様なことだとは到底思えないのです」
「そう思う根拠は?」
「切り取られた所は、刃物等ではなく、何か強い力で無理矢理もぎ取ったようでした…警察も宛には出来ませんし…」
「なるほど…」
「調べて頂けませんか?」
「それは構いませんが、報酬は頂きますよ?」
「分かっております。事件が解決し、村の者達が安心に暮らせるのなら、いくらでも」
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