暗闇

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 男は慌てて逃げようとしたが、手で水を弾くだけで恐怖で立ち上がれない… それでも四つん這いで、川の中を逃げ回る。  しかし、男は自分が全く進んでいない事に気付いた… 男の足は大きな手で力強く握ら、動けないでいたのだ… 「離せ!離せ離せ!」 男は掴まれた足を振りほどこうと、力一杯に大きな手を殴る… だが…大きな手はびくともしない… 「離せ!離せ!離せ離せ離せ離せ離せ離せ離せ離せ離せ離せ離せぇ!」 男の叫びも虚しく、いつの間にか男は軽々と持ち上げられていた。 そして持ち上げた男の足を、両手で引っ張り上げた。 「あぁ!ぎゃあぁぁあ!!」 男の左足はブチブチと肉の筋を切らしなが、大量の血が肉の間から湧き出て来た。  まるで繊維の様に糸を引き、骨が見え、その骨も簡単に引きはがされてしまった。  男は川に落ち、一瞬にして辺りを赤く染め上げた。 「うわぁぁあ!痛いぃ痛ぃ足い足!ぎぎぃぎぃ」 川の中で暴れ回るが、男の状況は変わらない… 右腕に激痛が走る。  鋭い犬歯は男の右腕に深く突き刺さっていた。 肉が裂け、筋肉の筋が一気にちぎれる… 男の右腕を口に加えたままで、無理矢理に引っ張る… ブチブチブチブチ… 鈍い音と共に、男の腕と胴が離れた。  男の意識はもう… ここにはなかった… 月が雲から顔を覗かせて、男を照らし出す… 男は赤い衣を纏った様に、赤くその姿を染め… 川も、まるで血の涙の様に赤く流れ続けていた… 地獄の川の様に赤く…
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