第一章・ドジな姉

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時計の針が、22時を回った頃、俺がバイトから帰ってくると、姉が慌ただしそうに出迎えてくれた。 靴を脱ぎ、揃えた後、リビングに入ると まず、テーブルの下に置かれた、2つの買い物袋が視界に入った。 今日も仕事が忙しく、残業だったのだろうか。 姉は着替えておらず、荷物も整頓されていない状態で、俺の為に飯を作ってくれていた。 両親は、5年前、立て続けに亡くなっている。 父は、仕事からの帰宅途中、車同士で事故死。 母は、立ち寄った銀行に強盗が入り、偶然、人質に捕られた母の頭に拳銃を突き付け、警察の挑発に混乱した犯人が誤って、銃弾を発砲し、一撃死。 両者の話は、俺が仕事中で、他の従業員ごしに、姉からの電話だと受け取ったのである。
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