華、咲とき

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「へ? いいのか? 無理しなくても、斎(サイ)や藤(フジ)に依頼まわすのに」 薙が、オレに気を遣っているのがわかる。 「いいよ、もう来たんだから。斎や藤だって、他の依頼あるだろ」 身なりを整え終わると、隣にある依頼主用の部屋の襖に、手を掛けた。 それを見るなり、薙が慌ててオレの手を襖から剥がす。 「俺が紹介するから、極力会話は避けろよ」 オレは黙って、頷く。 色素の薄い茶色の瞳が、優しく、オレを見下ろした。
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