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「アキコ…一体どうしたの、何があったの?」
母は目を真っ赤にして私に問い掛ける。
私の目からは、涙がツゥ…と流れた。
本当の事なんか言える訳がない。
アキコ、あんた頭オカシクなったんじゃないの?
そう言われるのが恐ろしかった。
母の肩越しに、病室のドアがめくれていくのが見えた。
私は布団をギュッと握り締めると「何でもない…何でもないの」と母に言う。
「……アキコ…」
「多分、少し疲れてただけ…本当…何でもないの…オカシクなんかない…」
声が震える。
ドアから目が離せない。
「お母さんお願い、一人にして…」
今にも母の顔がめくれそうな気がして、私は泣き出しそうになった。
見たくない。
そんな姿、絶対に見たくない。
「ちょっと先生の所に行ってくるわ…少ししたら戻ってくるから」
母はそんな私にいたたまれなくなって、席をたった。
母が出て行った後も、ドアはめくれたままだった。
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