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「アキコ!」
気がつくと私は病院のベッドの上にいた。
ハンカチを握り締めた母が、目を覚ました私を覗き込んでいる。
何故こんな所にいるのか分からない。
私はバイト先にいたハズだ。
「お母さん、私…」
「あんた、バイト先で倒れたのよ…」
鼻をグスグスいわせながら、母が状況を話してくれた。
段々と記憶が甦る。
バイト先でも、あらゆる隅っこがめくれて見えてしまったのだ。
店内の隅っこ…
ドアの隅っこ…
テーブルの隅っこ…
メニューの隅っこ…
お客さんのケータイの隅っこ…
レジのボタンの隅っこ…
その光景に手の平いっぱいに冷や汗をかき、私は硬直してしまった。
見動き一つせず固まっている私を、皿を下げてきたタイムリーダーのおばちゃんが怒鳴りつけた。
「ちょっと!サボってないで働いてちょうだい!!」
ガチガチと体を震わせて振り返った私は、とてもとてもイヤなモノを見てしまった。
おばちゃんの額の右側、ちょうど生え際の辺りがペリペリペリとめくれ始めたのだ。
キャーッッッ
私は鼓膜を引き裂くような悲鳴をあげ、失神した。
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