隅っこ

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いや、めくれたままでは無かった。 さめざめと泣いている私の耳に、まるで家がきしむような音が微かに聞こえてきたのだ。 ピ…ピキ…ピピピ…ベリ… 私は恐る恐るドアの方を見てみる。 ッッッ! ドアのめくれが、誰かにはがされているみたいに大きくなってゆく。 めくれの奥には、真っ暗な闇がぽっかりと広がっていた。 「イャ…」 私はとてつもない恐怖に襲われ、震える全身からは血の気が引いてゆく。 あの奥に…何か…何か…ッ オ母ァさンッッ 助けを呼ぼうと叫んだつもりだったが、誰かに締め付けられているように喉の奥がギュッと詰まっていて、カシュッカシュッとかすれた音しか出ない。 見てはいけない 見てはいけない 私は心の中で何度も呟いたが、体全体が凍りついてしまって全く動く事が出来ない。 眼球はまるで噛み合わせの悪い歯車のよう、ギシギシとわずかに左右に振れるだけだった。 おヵあサん 助ケて タすけテ 声は一つもまともに出ない。 めくれは20cm位にまでなっている。 瞬きすら出来ない私の瞳からは、ドロリとした涙がとめどなく流れ出していた。 誰か… 誰でもいい、そのドアを開けて…ッッ!
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