19人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
いや、めくれたままでは無かった。
さめざめと泣いている私の耳に、まるで家がきしむような音が微かに聞こえてきたのだ。
ピ…ピキ…ピピピ…ベリ…
私は恐る恐るドアの方を見てみる。
ッッッ!
ドアのめくれが、誰かにはがされているみたいに大きくなってゆく。
めくれの奥には、真っ暗な闇がぽっかりと広がっていた。
「イャ…」
私はとてつもない恐怖に襲われ、震える全身からは血の気が引いてゆく。
あの奥に…何か…何か…ッ
オ母ァさンッッ
助けを呼ぼうと叫んだつもりだったが、誰かに締め付けられているように喉の奥がギュッと詰まっていて、カシュッカシュッとかすれた音しか出ない。
見てはいけない
見てはいけない
私は心の中で何度も呟いたが、体全体が凍りついてしまって全く動く事が出来ない。
眼球はまるで噛み合わせの悪い歯車のよう、ギシギシとわずかに左右に振れるだけだった。
おヵあサん
助ケて
タすけテ
声は一つもまともに出ない。
めくれは20cm位にまでなっている。
瞬きすら出来ない私の瞳からは、ドロリとした涙がとめどなく流れ出していた。
誰か…
誰でもいい、そのドアを開けて…ッッ!
最初のコメントを投稿しよう!