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ようやく週末を迎え、父が脚立を抱えて私の部屋へやって来た。
壁紙の事をすっかり忘れていた私は一瞬キョトンとしたが「あぁ、そうか」と呟き、部屋の隅を指差す。
父と一緒に真下にあるラックをどかして、脚立をセットする。
「うーん、確かにはがれてるなぁ」
父は少し首を捻りながら、めくれている壁紙の端をつまんでいる。
脚立を支えていた私は、父の疑問めいた言葉が気になって尋ねてみた。
「何かおかしいの?」
「ん?うーん…ホラ、天井と壁の間には縁取りがしてあるだろう?普通、こんなはがれ方はしないハズなんだけどな…」
言われてみれば、天井と壁の部分には茶色い縁取りが添うように施されている。
それは天井だけでなく、床と壁も同じように縁取りされていた。
「壁紙の端はこの縁取りの下にあるハズだから、こんな風にめくれる事はあまり考えられないんだよ」
父の感じている疑問を理解した私は「ハヤリの手抜き工事だったんじゃないの?」と茶化す。
「バカもん、天下の積山ハイムに限ってそんな事あるか」
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